抗菌、薬用せっけんに効果なし?EUとアメリカが販売禁止にした殺菌成分と日本製品18選
「手についたばい菌を綺麗に!」
そんな触れ込みで、一般の石鹸とは別に抗菌(薬用)せっけんが売られています。
ところが、そういった抗菌せっけんなどの販売を、EUに続いてアメリカ食品医薬品局FDAも販売を禁止しました(2016年9月2日)。
単純にいえば、
「抗菌(薬用)せっけんが細菌の増殖を防ぐ効果は、一般の石鹸や水と比べても差はない。」
そうです。
むしろ、抗菌(薬用)せっけんを使うことで、免疫力低下やアレルギーなど様々な悪影響が問題視されています。
もしかしたら、あなたの使っている製品は効果がないばかりか、有害な製品かも知れません。是非チェックしてみてください。
Contents
規制対象になった主な成分
アメリカ食品医薬品局FDAは、殺菌剤19種類を含んだ抗菌せっけんなどの販売を禁止しました。
「FDA医薬品部のジャネット・ウッドコック(Janet Woodcock)氏は、「抗菌せっけんには細菌増殖を防ぐ効果があると消費者は考えているかも知れないが、通常のせっけんと水で洗うよりも有効であることを裏付ける科学的根拠はない」と明言した。その上で「殺菌剤が長期的には益より害になる可能性を示したデータもある」と説明した。」
(AFP通信 http://www.afpbb.com/articles/-/3099720?cx_part=txt_topstory)
禁止された殺菌剤19種類の中で、トリクロサンとトリクロカルバンを含んだせっけんやハンドソープ、ボディソープなどが多く販売されています。
アメリカの場合、トリクロサンの殺菌効果をうたう液体抗菌製品93%に含まれていて、2000種類以上の製品が販売されているそうです。
また、EUの専門機関である欧州化学機関(ECHA)が人の肌や頭皮の殺菌効果を目的とする衛生用品(せっけんやシャンプーなど)に対して、トリクロサンの使用を禁止する決定が、アメリカに先立ち2015年6月25日に決定されています。
日本でも抗菌作用として、トリクロサンとトリクロカルバンが厚生労働省により認められています。しかし、EUに続いてアメリカの結果を考えると、製品ラベルの成分の中にトリクロサンとトリクロカルバンが含まれていたら使用を控えたほうが良さそうです。
殺菌剤の安全性への影響
販売を禁止された殺菌剤ですが、通常のせっけんと比べて効果に差がないだけでなく、安全性に疑問が呈されています。
アメリカ食品医薬品局FDAが抗菌せっけんなどで販売を禁止した殺菌剤19種類はこちらをクリックしてください。
ここでは、日本で広く使われているトリクロサン(トリクロカルバンも有名)の安全性について紹介します。
トリクロサンの安全性
元々は、殺虫剤成分として1969年に開発されましたが、1972年から一般に出回り始め、病院といった医療施設で殺菌用に使われいました。
トリクロサンは、せっけん以外にもハンドソープ、ボディソープ、シャンプー、歯磨き粉、化粧品、果ては家庭用洗剤にも使用されています。
基本的には、除菌や殺菌、薬用と書かれている上記の製品にはほぼ入っていると考えてよいと思います。
トリクロサンは、皮膚や口を経由して簡単に体の中に浸透することがわかっています。
体内に浸透した後も分解されず、血液や鼻水、尿、母乳に含まれます。
ミシガン大学の調査では、成人90人中37人(約41%)の鼻水にトリクロサンが検出されています。
現在、人体への悪影響や環境汚染について、最近の研究により色々なことが明らかになってきました。
最近の研究で明らかになってきたトリクロサンによる人体や環境への影響は下記の内容です。
- 感染症のリスク増加
- 腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の変化と免疫力低下
- 抗生物質耐性菌の増殖
- 環境汚染
感染症のリスク増加
ミシガン大学の研究によると、トリクロサンによって黄色ブドウ球菌が定着しやすくなり感染症を促進する危険性が高まるそうです。
(記事:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3993860/)
黄色ブドウ球菌は、人間の皮膚や体内に存在する細菌の一種ですが、増殖すると腫瘍や表皮の感染症、食中毒、肺炎、髄膜炎、敗血症といった死に至るような感染症の原因となります。
トリクロサンを使用する生活を送ることで、皮膚や体内に黄色ブドウ球菌が定着して増殖しやすい環境を作っていることになります。
腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の変化と免疫力低下
腸内の細菌や細菌のバランスに異常が起こり、免疫力が低下して病気になりやすくなったり、病気が悪化しやすくなります。
色々な研究で指摘されているのは、筋肉の収縮障害や発がん性、アレルギー症状などです。
オレゴン大学によると、ゼラフィッシュという魚を使った実験では、トリクロサンによってゼラフィッシュの腸内細菌が異変を起こしました。腸内細菌のバランスが崩れることで、病気を発症したり、すでにある症状を悪化させる危険性が高いと報告しています。
(記事:http://oregonstate.edu/ua/ncs/archives/2016/may/common-antimicrobial-agent-rapidly-disrupts-gut-bacteria)
PNAS(米国科学アカデミー紀要)では、トリクロサンによって肝臓の病気や肝臓がんを引き起こされるという報告があります。
(記事:http://www.pnas.org/content/111/48/17200.abstract)
カリフォルニア大学デービス校(UCDAVIS)によると、トリクロサンによって人間の筋肉に収縮障害をもたらすことが報告されています。
(記事:https://www.ucdavis.edu/news/chemical-widely-used-antibacterial-hand-soaps-may-impair-muscle-function)
テネシー大学ノックスヴィル校によると、トリクロサンがエストロゲンや脂肪酸合成を阻害してガンを引き起こすリスクがあると報告しています。
(記事:http://scicurve.com/paper/24566048)
耐性菌の増殖
アメリカ食品医薬品局(FDA)によると、トリクロサンは抗生物質が効かない耐性菌化を促進すると報告しています。
(記事:http://www.fda.gov/ForConsumers/ConsumerUpdates/ucm378393.htm)
つまり、今まで効果があった抗生物質がきかない細菌がどんどんと増えることで、感染症が流行しやすくなる可能性があります。
環境汚染
ケベック大学Gurpreet Singh Dhillonらによると、トリクロサンは分解されにくい物質で下水道からも検出されており、人間だけでなく生態系全体に悪影響を及ぼす可能性を指摘しています。
新たな環境汚染物質であるため、規制をするべきだと報告しています。
(記事:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4454990/)
トリクロサンを含む主な日本製品
日本製品で、抗菌、除菌、薬用といった表示がある製品の場合、ほぼトリクロサンが入っています。
製品裏面にある成分表示をみて、トリクロサンやトリクロカルバンが書かれていたら、気を付けましょう。
ここでは、一般的に広く流通している日本製品をご紹介します。
花王
画像:花王より引用(下記リンク先)
ビオレ さらさらパウダーシート 薬用デオドラント
画像:花王より引用(下記リンク先)
ビオレ さらさらパウダーシート 薬用デオドラント クールミントの香り
画像:花王より引用(下記リンク先)
ビオレU 薬用泡で出てくるハンドソープ フルーツの香り
画像:花王より引用(下記リンク先)
ピュオーラ アクア
画像:花王より引用(下記リンク先)
ピュオーラ アクアつよめ
画像:花王より引用(下記リンク先)
花王プロシリーズ 薬用C&C(クリーン&クリーン)F1
画像:花王プロフェッショナル・サービスより引用(下記リンク先)
花王プロフェッショナル 薬用ハンドソープ
マンダム
画像:アマゾンより引用(下記リンク先)
画像:アマゾンより引用(下記リンク先)
画像:アマゾンより引用(下記リンク先)
シンプリティ さらさら フットスプレー
第一三共ヘルスケア
画像:第一三共ヘルスケア(下記リンク先)
クリアレックスフォーム
画像:第一三共ヘルスケア(下記リンク先)
クリアレックスW
画像:第一三共ヘルスケア(下記リンク先)
ピロエース石鹸
牛乳石鹸共進社
※製造メーカーに確認したところ、2013年トリクロサンからイソプロピルメチルフェノールに変更したとのことです。
サンスター
画像:ケンコーコム(下記リンク先)
GUM(ガム)薬用 デンタルリンス
画像:ケンコーコム(下記リンク先)
画像:ケンコーコム(下記リンク先)
GUM(ガム) 薬用デンタルリンス 爽快タイプ
クラシエホームプロダクツ販売
画像:ケンコーコムより引用(下記リンク先)
画像:ケンコーコムより引用(下記リンク先)
ナイーブ 薬用ハンドソープ お茶の葉
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社
画像:レキットベンキーザージャパン株式会社HPより
※薬用石鹸ミューズは、配合成分トリクロカルバンを変更することをHPにて発表しています。今後は、19種類の殺菌剤を含まない製品になる予定です。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか?
今まで、抗菌や除菌、薬用成分としてトリクロサンやトリクロカルバンは使用されてきました。
ところが、研究の結果、抗菌せっけんは普通の石鹸や水での手洗いと比べて抗菌効果がないことがわかりました。
EUとアメリカで販売が禁止されたことで、今後は日本でも成分の見直しが行われていくと思いますが、どれくらいかかるかはわかりません。
日本でも、厚生労働省からアメリカで発売禁止になったトリクロサンをはじめとする成分を変更するように通達がでました。
すでに無益で有害なことがわかった成分ですので、トリクロサンやトリクロカルバンの使用は今後控えられたほうがよいと思います。