その水素水は本当に水素が入っている?国民生活センターの調査でわかった水素水の実態
抗酸化作用、いわゆる老化を防ぐ効果がある雰囲気を醸し出して、ペットボトル、アルミの入れ物、水素を作る生成器など、たくさんの製品が販売されています。
飲んだ人の中には、効果を体感した人もいますし、わからなかったという人もいるようです。
水素は見た目で入っているかはわからないので、製品によっては水素がそもそもほとんど入っていない場合も考えられます。
そこで、この記事では水素水製品に関する現状について、国民生活センターのテスト結果などを踏まえて検証をしていきたいと思います。
そもそも水素水とは?
水素水とは、水の中に水素がたくさん入った水の総称として使われています。元々水素水ブームが始まったのは、日本医科大学 太田成男教授が2007年にnature medicineに掲載した水素による抗酸化効果が始まりだと言われています。
論文は下記ページをご覧ください。
水素の抗酸化作用に関する論文
http://www.nature.com/nm/journal/v13/n6/abs/nm1577.html
(Nature Medicine 13, 688-694 (1 June 2007) | doi:10.1038/nm1577)
この論文で述べられているのは
「水素分子が体にとって有害なヒドロキシラジカルといわれる活性酸素を選択的に還元し、細胞の酸化ストレスを防御する(老化を予防する)効果が認められたことと、水素ガスをラットに吸引させたら、脳の虚血再還流障害が抑制された。」
という内容です。
単純にいえば、水素を何らかの形で体内にたくさん取り込むと、体の老化や炎症が抑えられるから、病気予防や治療に効果あるんじゃないか、ということです。
水素に関する研究は、現在も世界中で続けられているようで一定の効果が出ているようです。
ただし、気になるのは論文を発表した太田教授の個人ページに書かれている一文です。
「注意!!活性水素、マイナス水素イオン、プラズマ水素、水素吸蔵サンゴ、水素吸蔵ゼオライト、と記載されているものや、「水素水」と称したペットボトルの水は、分子状水素、水素ガス、水素水とは別物で 私の研究成果とは全く無関係です。 消費者の方は、インチキ商品に注意しましょう。」
(太田成男のちょっと一言より引用
http://shigeo-ohta.com/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/)
ほとんどの市販品はインチキだと書いているように読めてしまうのですが。。。
水素水の品質について
水素がある程度体に良い影響があると考えた場合、市販の水素水などは本当に水素が入っているのでしょうか?
国民生活センターのテスト結果を元に調べていきます。
溶存水素濃度について
溶存水素濃度とは、水の中にどれくらいの水素が含まれているかを示す値です。
「開封時の溶存水素濃度を測定したところ、容器入りのパッケージの溶存水素濃度表示に、充填時や出荷時と記載のあった5銘柄のうち3銘柄で、表示値より測定値の方が低い濃度でした。また、パッケージに表示のない3銘柄のうち、ペットボトルの2銘柄では溶存水素(水素ガス)は検出されませんでした。」国民生活センター調べ
溶存水素濃度をパッケージに書いている5つの製品のうち、2銘柄しか表示している通りの水素濃度がなかったようです。60%の製品は、過大表記だということですね。
また、ペットボトル3銘柄のうち、2銘柄では溶存水素(水素ガス)が測定されなかったということは、ただの水を水素水として販売しているので詐欺レベルの製品ですね。
ペットボトルの水素水は買ったとしても、高確率でただの水なのでお勧めできないですね。
溶存水素濃度の減少について
水素は空気に触れるとどんどんと抜けていく性質があります。
また、H+といったイオン化した水素の場合、ペットボトルのような容器だとすぐに電子がペットボトルを通り抜けて出ていってしまいます。
そのため、アルミの入れ物に入れている水素水製品が多くあります。
どれくらいのスピードで溶存酸素が抜けていくか色々な条件で調べたデータは下記の通りです。
「開封時に溶存水素が検出された容器入り8銘柄を、未開封のまま20℃で1カ月間保管したところ、全ての銘柄で溶存水素濃度がやや低下していました。」
「開封時に溶存水素が検出された容器入り8銘柄を、開封後に蓋(ふた)を閉めて放置した場合には、溶存水素濃度が5時間後には30~60%程度に、24時間後には10%程度に低下しました。」
「生成器の取扱説明書等には、水質等により値が変わる旨の記載もありましたが、取扱説明書等に溶存水素濃度の表示のあった銘柄で、表示値よりも測定値の方が低くなったものがありました。」
「生成器で作った水をコップに移し替えると、1時間後に溶存水素濃度が約50~60%に低下しました。」
(いずれも国民生活センター調べ)
製造してから日数が経過するにつれて、開封していなくても溶存水素が減少することがわかります。
また、いったん開封すると蓋をしても24時間以内にほとんどの溶存水素が抜けてしまいます。
水素水生成器で作った水素水も同様で、製造から1時間程度で溶存水素濃度が半分まで減少してしまいます。
とにかく、水素水は鮮度が重要で、蓋を開けたらすぐ飲む必要がありますね。
水素水で期待できる効果
おそらく多くの方が、老化防止効果を期待して水素水を飲んでいると思います。
ところが、国民生活センターが水素水販売業者にアンケートを行ったところ、
水素水の飲用により期待できる効果は、「水分補給」が最も多い回答でした。
(国民生活センター調べ)
水分補給は、普通の水でも十分に行えることですので、わざわざ高額な水素水を飲む意味が全くないような気がします。
また、自社で販売している水素水に関する効果について調査や研究をしているかという回答に対しては、
17社中9社
(国民生活センター調べ)
だそうです。
健康効果を期待させる製品なので、自社で作った製品にどんな効果があるかを調査、研究するのは当然かと思いましたが、半分近くの会社が売ったら後は知らないという考え方のようです。
消費者へのアドバイス
国民生活センターのアドバイスで特に参考にしたほうが良いと考えられる内容は、
「水素水には公的な定義等がなく溶存水素濃度も様々です。また、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品として許可、届出されたものは、現在のところありません。」
という一文です。
水素水の中に、いわゆる公的な効果を認められた製品は一切ないというメッセージです。
水素水を飲んで何か体感した人以外は、水素水を飲む根拠がないからやめておきなさいと言うことですね。
まとめ
今回は、水素水製品の品質、溶存水素濃度を中心にまとめました。
その結果、ペットボトル入りの水素水は買う価値が低いことがわかりました。
また、水素水は鮮度が重要なので、
- 製造後すぐに飲むこと
- 一旦開封したら、すぐに飲み干すこと
最も重要なのは、水素水は公的に何の効果も認められていない製品なので、老化防止などを期待して飲むのであれば、何か効果を感じた方に限定されるということです。
効果を感じない人にとってはただの高い水ですので、無理に飲むことはお勧めできません。
以上参考にしてください。